ASADASHI
AIの確率的出力を表す紙工作のミニチュアジオラマ、複数方向に広がる矢印と小さな本
研究・論文2026.06.04·読了 2·難易度: ふつう

AIの「ブレ」は欠陥か?業界の見方が変わり始めた

AIの確率的出力を表す紙工作のミニチュアジオラマ、複数方向に広がる矢印と小さな本

朝の出汁版(通勤2分)

  • ポイント1: MicrosoftがClause・GPTに迫る独自モデルMAIを発表し、蒸留・合成データなしという透明性の高い手法が「現時点で最もオープンな最先端AIの作り方」として注目を集めている。
  • ポイント2: @sammy_suyamaが指摘するように、LLMの「確率的な出力」は品質の不安定さと混同されがちだが、両者を切り分けて理解することが、AIを使い倒す上での認識の土台になる。
  • ポイント3: MAIの論文(公開済み)を読むことで、現在のトップレベルモデルがどう作られているかを把握でき、自分のAI活用判断の解像度を上げる手がかりとして活用したい。

出汁の素(深読みモード)

これって結局どういうこと?

「LLMの出力が確率的」という表現、最近よく目にします。ただ、この言葉が「結果がブレる=使えない」という文脈で使われているケースが増えていると、AIエンジニアの@sammy_suyamaが指摘しています。要は、「確率的であること」と「品質が不安定であること」は別の話、ということです。

それと同時期に、Microsoftが独自モデル「MAI」を発表しました。他社モデルからの蒸留なし、合成データなしという手法で構築され、ClaudeやGPTに迫る性能を持つとされています。論文が公開されており、「現時点で最もオープンな最先端AIの作り方」という見方も出ています。

この2つは一見別の話に見えますが、根っこは同じです。AIの「仕組み」と「振る舞い」を正確に把握することが、使う側の判断精度を上げる。それが今、改めて問われ始めています。

なぜこのタイミングで重要?

「確率的な出力」をネガティブに語る文脈は、AI活用の議論でよく登場します。「毎回違う結果が返ってくるから信頼できない」「品質が安定しないから本番には使えない」——こうした声は根強い。しかし@sammy_suyamaの指摘を整理すると、「確率的であること」はLLMの設計上の特性であって、それ自体が欠陥ではないということになります。問題にすべきは「出力の品質がコントロールできないこと」であり、両者は切り分けて考える必要があります。

この認識の混乱は、使う側の判断にも影響します。「ブレる=使えない」と思い込むと、プロンプト設計の工夫や用途の選定といった実践的な対処よりも、「そもそも使えない」という結論に早まりやすい。逆に「確率的であること」の意味を正確に理解していれば、どのタスクに向いていてどこに限界があるかの見立てが立てられます。

MicrosoftのMAI発表はその文脈でも興味深い動きです。蒸留・合成データなしという手法はモデル構築の透明性を高め、「どうやって作られたか」が追いやすい。AIの「正確さ」を測る戦いが始まったでも触れたように、モデルの評価軸が「性能の高さ」だけでなく「作り方の透明性」へと広がりつつあります。使う側としては、このトレンドを把握しておくことが、ツール選びの判断軸を持つ上での土台になります。

具体的に始めるなら

まず「確率的」の意味を自分の言葉で整理する

@sammy_suyamaのポストを起点に、「確率的な出力」と「品質の不安定さ」の違いを言語化してみることが最初の一歩です。具体的には、手元でよく使っているAIタスク(要約・コード生成・文章校正など)を思い浮かべ、「このブレは確率的な特性?それとも品質の問題?」と問い直してみてください。この問い自体がプロンプト設計の改善につながります。

MAIの論文を「読み物」として使う

Microsoftが公開したMAIの論文(https://t.co/O1TnKXXC9A)は、現時点でオープンに入手できる最先端モデルの構築記録です。数式を追う必要はありません。注目したいのは以下の点です。

  • 蒸留・合成データなしでどこまで性能が出るか
  • 学習データの選定・前処理にどんな考え方が使われているか
  • ClaudeやGPTとの性能差がどの評価軸で生まれているか

アブストラクトと結論部分だけでも読むと、「最先端モデルが今どこにいるか」の地図が頭に入ります。

温度パラメータを意図的に触ってみる

使い倒す視点でいえば、LLMの「確率的な出力」はTemperature(温度)パラメータで制御できます。OpenAIのPlaygroundやAnthropicのClaudeAPIでは、このパラメータを0〜1(または2)の範囲で調整可能です。

  • Temperature 0:ほぼ毎回同じ出力(決定論的に近い)
  • Temperature 1前後:より多様な出力

OpenAI Playgroundは無料アカウントで一定量試せます(https://platform.openai.com/playground)。同じプロンプトをTemperature 0と0.9で比較してみると、「確率的な出力」の意味が体感として理解できます。

Anthropicのサイバーセキュリティ調査も合わせて読む

Anthropicが発表した832件の悪意ある使用事例の分析(https://t.co/fgOqJRh2rx)は、AI活用のリスク面を把握する資料としても使えます。「どう使われると危ないか」を知ることは、「どう使えば安全か」の判断基準になります。

よくある疑問

Q. 「確率的な出力」は実際の作業でどう影響する?

たとえば同じプロンプトを10回送っても毎回まったく同じ文章にはならない、これが確率的な出力の表れです。ただし、これは「品質がランダムにバラつく」こととは違います。Temperatureを低く設定したり、プロンプトに条件を明示したりすることで、出力の「振れ幅」はコントロールできます。問題が起きるのは、この特性を理解せずに「なぜブレるのか」がわからないまま使い続けているケースです。

Q. MAIはChatGPTやClaudeの代替として今すぐ使えるの?

発表時点では、MicrosoftがMAIを一般向けのプロダクトとして公開しているわけではありません。論文の公開が主なアクションであり、研究・学習目的での活用が現実的です。「使えるツール」というより「業界の構造を理解するための教材」として位置づけるのが今の段階では適切です。今後Azure経由などで提供される可能性はあります。

Q. LLMの仕組みを知ることが使い倒しにどうつながる?

仕組みを知ると、「なぜこの出力になったか」の仮説が立てやすくなります。たとえば、AIは「女性」を内側で認識しても「男性」と答えるで紹介したように、モデルの内部表現と出力の間には乖離が起きることがあります。こうした知識があると、プロンプトの改善だけでなく、どのタスクにそもそも向いていないかを見極めやすくなります。

もう一歩踏み込みたい人へ

APIレベルでTemperatureとtop_pを組み合わせる

出力の「確率性」をより細かく制御したい場合、OpenAIやAnthropicのAPIではtemperaturetop_pの2つのパラメータが使えます。公式ドキュメント(https://platform.openai.com/docs/api-reference)によると、両方を同時に変更することは非推奨とされており、どちらか一方を調整するのが基本です。決定論的な出力が必要なタスク(データ抽出・分類など)ではtemperature=0が推奨されています。

MAI論文を自動化の参考にする

MAIの論文で注目されているのは、蒸留・合成データなしという手法の再現性の高さです。独自の小規模モデルをファインチューニングする際の設計思想として参照できます。HuggingFaceのモデルハブ(https://huggingface.co/models)と組み合わせることで、オープンソースモデルをベースにした実装の参考にもなります。

Anthropicのサイバー分析レポートをプロンプト設計に活かす

Anthropicが公開した脅威分析レポートは、AIが悪用されるパターンをMITRE ATT&CKフレームワークにマッピングしたものです。開発者やシステム設計者であれば、自分が構築するAI機能にどんなリスクが潜むかを確認する一次資料として使えます。公開レポートはAnthropicのサイト(https://www.anthropic.com)から確認できます。AIの「考え直し力」を高める新手法が登場でも触れたような出力制御の研究と合わせて読むと、モデルの「信頼性設計」の全体像が見えてきます。

元になったツイート

  • 「LLMの出力が確率的である」という表現をよく目にしますが、あまり好きじゃありません。多くの場合、「品質が安定しない」「正確性が足りない」という意味合いで使われているように思います。「確率的」というのが悪い意味で捉えられている。

  • Micorosoftが先ほど発表した独自モデルのMAIは、蒸留なし、合成データなしという、徹底したアプローチで作られており、それでいてClaudeやGPTに迫るレベルになっているので、この論文は実質的に今一番オープンな最先端AIの作り方かも。 https://t.co/O1TnKXXC9A https://t.co/Gjy1qFvjiW

  • How well do the security community's techniques hold up against AI-enabled cyberattacks? We examined 832 malicious accounts and mapped their activity onto a longstanding database of tactics and techniques used by threat actors. Here's what we learned:https://t.co/fgOqJRh2rx

参照ソース