
AIの研究力、人間を超え始めた件
朝の出汁版(通勤2分)
- ポイント1: Anthropic公式の発表によると、最新モデル「Mythos Preview」はAI研究タスクで人間の判断を64%の場面で上回り、コード最適化速度は1年で約3倍から約52倍へと急伸している。
- ポイント2: 東大とAnthropicが共同で日本の生成AI利用実態を調査するなど、「AIが研究・開発をどこまで代替できるか」という問いが、学術・産業の両軸で本格的に検証フェーズへ入った。
- ポイント3: AIに「次のステップは何か」を判断させる使い方に関心があるなら、Anthropicの公式発表資料に掲載されているMythos Previewの研究セッション事例から、自分のプロセスに応用できるヒントを探してみるのが入口になる。
出汁の素(深読みモード)
これって結局どういうこと?
Anthropicが公式に発表した内容が、AI業界において一つの節目として注目されている。要点は二つある。一つは、最新モデル「Mythos Preview」がAI研究の判断タスクで人間の研究者を64%の場面で上回ったこと。もう一つは、コード最適化のスピードが1年間で「約3倍」から「約52倍」へと急伸したこと。
Anthropicの発表によると、測定方法は毎回同じ。「小さなAIモデルを学習させるコードを渡し、新モデルに高速化させる」というタスクで、熟練した人間が4〜8時間かけて達成できる速度改善を基準にしている。2024年5月時点のClaude Opus 4は約3倍。それが今年4月のMythos Previewで約52倍へ到達した。
要は、「AIが人間の研究補助をする」フェーズから、「AIが研究の判断そのものを担い始める」フェーズへの移行が、数値として見え始めたということだ。
なぜこのタイミングで重要?
注目したいのは、この発表が「性能自慢」にとどまらない構造を持っている点だ。
Anthropicが示したもう一つのベンチマークは、研究セッションにおける「次の一手」の判断精度だ。人間の研究者が判断を誤った地点でセッションを一時停止し、そこまでの文脈をモデルに渡して「次に何をすべきか」を問う。Mythos Previewはこのタスクで64%の場面において人間より優れた判断を示した。2024年の同測定では22%だったため、1年で約3倍の精度向上を果たしている。
この「次の一手を判断する」という能力は、研究の文脈に限らない。プロジェクトの意思決定、コンテンツの改善、戦略の修正——どれも「途中の文脈を与えて、次に何をすべきかを問う」構造と同じだ。つまりこの能力の向上は、AIをツールとして使い倒したい人間にとって、実用範囲が一気に広がることを意味する。
タイミングとして見逃せないのは、東大とAnthropicが日本の生成AI利用実態を共同調査すると同時期に発表されたことだ。研究機関が「AIがどこまで研究を代替できるか」を本格的に検証し始めたことと、Anthropicが具体的な数値でその進捗を示したことが重なっている。「AIが研究・開発の何をどこまで担えるか」という問いは、産学の両軸で検証フェーズに入ったと見るのが自然だ。
AIの「正確さ」を測る戦いが始まったでも触れたように、AIの能力評価をめぐる方法論自体が議論されている。Anthropicが「毎回同じテストで測る」という方針を明示していることは、その文脈においても興味深い動きといえる。
具体的に始めるなら
Mythos Previewはまだ一般公開されていないが、「次の一手をAIに判断させる」という使い方は、すでに現行のClaudeで試せる。動き出しを三段階に分けて整理する。
ステップ1:「途中の文脈+判断の依頼」という問い方を試す まずはClaude.ai(無料プランあり)で試せる。やり方は単純で、「ここまでの経緯を読んでほしい」と前置きしたうえで、自分が取り組んでいるプロジェクトや課題の途中経過を貼り付け、「次に何をすべきか、その理由とともに教えてほしい」と問う。ポイントは「最初から相談する」ではなく「途中で立ち止まった地点から問う」形式にすること。Anthropicの測定と同じ構造だ。
ステップ2:判断の「精度」を比較する材料を作る 同じ途中経過を複数の異なるモデル(Claude / GPT-4o / Gemini)に問い、それぞれの「次の一手」を比較するのが有効だ。モデルによって判断の優先順位が異なることが分かり、どのモデルが自分のタスク構造と相性がよいかを見極める材料になる。各モデルとも無料プランの範囲で試せる。
ステップ3:コード最適化の方向性を確認する コードを扱う人は、既存のスクリプトをClaudeに渡して「このコードのボトルネックはどこか、どう改善できるか」と問う使い方が入口になる。Anthropicの発表が示した「コード高速化」の能力は、現行モデルにもある程度継承されている。Claude.aiのProプラン(月額約3,000円)またはAPIキーがあれば、より長いコンテキストでの検証が可能だ。
発展として、AIを1000体並列起動、Claude Codeが自走するで紹介した「Claude Code」との組み合わせも面白い方向性だ。「判断」はClaude.aiで行い、「実装」はClaude Codeに渡すという分業の設計を試してみる価値がある。
まず触りたい人は、Claude.aiの無料プランから始めて「途中経過を渡す→次の一手を問う」という問い方を一度試すのが最短の入口になる。
よくある疑問
Q. Mythos Previewはいつ使えるようになる? Anthropicの公式発表時点では、一般公開のスケジュールは明示されていない。「Preview」という名称が示す通り、現時点は限定的な評価フェーズにある。最新情報はAnthropicの公式サイト(anthropic.com)またはXの@AnthropicAIアカウントで確認するのが確実だ。
Q. 「64%の場面で人間を上回る」は、何でも任せられるということ? そうは読まない方がよい。発表によると、測定対象は「人間の研究者が判断を誤った特定の地点」でのリカバリー精度だ。つまり「間違えやすいポイントでの軌道修正」という限定された文脈での数値であり、研究全体をAIが代替できることを意味するものではない。「AIが人間の判断を補完できる場面の比率が上がった」と読むのが適切だ。
Q. コード最適化「52倍」は自分のコードでも期待できる? Anthropicが使用したテストは、AIモデルの学習コードという特定のタスクに絞った測定だ。汎用的なコード全般に同倍率が出るわけではない。ただし「熟練者が数時間かけてやる最適化をAIが代替できる方向性に近づいている」という傾向は、現行モデルにも程度の差こそあれ存在する。自分のコードで試してみて、その差分を自分で確認するのが現実的なアプローチだ。
もう一歩踏み込みたい人へ
「次の一手を判断させる」という設計をAPIで実装したい人向けに、構造を整理する。
Anthropicが測定に使ったアーキテクチャは、要するに「セッション履歴(context)+判断タスク(prompt)」の組み合わせだ。APIを使う場合、messagesパラメータに「これまでのやり取り」を配列で渡し、最後のuser messageで「次に何をすべきか」を問う形が基本構造になる。Anthropic APIの公式ドキュメント(docs.anthropic.com)のMessages APIリファレンスに詳細が記載されている。
自動化に応用するなら、「定期的に途中経過を記録→一定ポイントでAPIを叩いて判断を取得→その結果をSlackやNotionに出力」というパイプラインが現実的だ。LangChainやLlamaIndexを使えば、セッション履歴の管理とAPI呼び出しをコード数十行で実装できる。
コード最適化の方向で深掘りするなら、Anthropicが公開しているClaude Codeのドキュメントも参照価値がある。AIを1000体並列起動、Claude Codeが自走するで紹介した並列実行の設計と組み合わせると、「複数の最適化案をモデルに並行生成させて比較する」という使い方が見えてくる。
東大とAnthropicの共同調査については、現時点で詳細な方法論は公開されていないが、学術的な検証フレームワークが出た際には実務への応用を考える素材になる。日本語文脈でのAI利用実態のデータが出てくることは、使い方の設計を見直す機会になるはずだ。
元になったツイート
"東大と米アンソロピック、日本の生成AI利用の実態調査 普及後押し" https://t.co/Ge835YX49u
Each time we release a model, we run the same test: give it code that trains a small AI model, ask the new model to speed it up. It takes a skilled human 4-8 hours to reach 4x faster. In May 2024, Claude Opus 4 averaged a ~3x speedup. This April, Mythos Preview achieved ~52x.
AI research is a series of next-step decisions. We looked at sessions where a human researcher took a wrong turn, showed Claude the session up to that point, and asked it what to do next. Mythos Preview improved on humans 64% of the time—up from 22% in 2024. https://t.co/Y0HLoktx
参照ソース
- [X]@ImAI_Eruel: "東大と米アンソロピック、日本の生成AI利用の実態調査 普及後押し" https://t.co/Ge…→ twitter.com/ImAI_Eruel/status/2062391079106957…
- [X]@AnthropicAI: Each time we release a model, we run the same test…→ twitter.com/AnthropicAI/status/206256886924047…
- [X]@AnthropicAI: AI research is a series of next-step decisions. We…→ twitter.com/AnthropicAI/status/206256887087200…
