ASADASHI
バイブコーディング
バイブコーディング2026.09.09·読了 2·難易度: ふつう

AIがデータを自力で横断調査する時代へ

朝の出汁版(通勤2分)

  • ポイント1: GoogleがData Agent Kitを公開し、倉庫のデータ・DBの顧客情報・ストレージ上のJSONファイルといった複数の異なるシステムを、AIが自律的に横断して分析できるようになった。
  • ポイント2: 「売上は変わらないのに客単価が下がった理由は?」のような答えが一か所にない問いに対し、AIが自分でクエリを書き・試行錯誤し・複数のデータソースを渡り歩いて回答を返す構造で動いており、従来の「ダッシュボードを人が読む」作業を代替するアーキテクチャになっている。
  • ポイント3: VS Code系のエディタ(CursorやAntigravity IDE)に拡張として入れるだけで使い始められるため、コードが少し書けるなら今すぐ自分のデータ分析環境に組み込むことができる。

出汁の素(深読みモード)

「なぜ客単価が下がったのか」に答えられないダッシュボードの限界

月曜の朝、上司から「1月の平均注文額が7%下がったのに、売上合計はほぼ横ばいだった。なぜ?」とチャットが飛んでくる。この問いが厄介なのは、答えが一か所にないからだ。

注文履歴はデータウェアハウスに、顧客情報はPostgreSQLの本番DBに、キャンペーン設定はオブジェクトストレージ上のJSONファイルに——それぞれ別のシステムに散らばっている。既存のBIツールやダッシュボードは「あらかじめ決まった問いに答える」のは得意だが、こういう横断的・探索的な問いには弱い。結局、人がSQLを書き直しながら10個のブラウザタブを開き、半日が溶ける。

Googleが公開したData Agent Kitは、このボトルネックを構造ごと変えようとしている。

Data Agent Kitの仕組み:AIが自分でクエリを書き、複数システムを渡り歩く

Data Agent Kitは、MCPサーバー群とエージェントスキルのセットで構成されたツールキットだ。「自然言語で問いを投げると、AIが必要なクエリを自分で組み立て、複数のデータソースを横断しながら答えを探しにいく」というアーキテクチャで動く。

具体的な流れはこうだ。「客単価が下がった理由を教えて」という問いに対して、エージェントはまずデータウェアハウスの注文テーブルを調べ、次にPostgreSQLで顧客セグメントを確認し、さらにJSONファイルで該当期間のプロモーション設定を参照する。人間なら3つの異なるシステムに別々にアクセスして、クエリの方言も書き換えなければならない作業を、エージェントが自律的につないでいく。

注目したいのは「試行錯誤しながら答えを絞り込む」構造にある点だ。最初のクエリで答えが出なければ、条件を変えて再クエリする。これは従来の「事前に定義されたパイプライン」ではなく、探索型の分析に近い動き方をする。

Googleはこれを「アジェンティック・アナリティクス(Agentic Analytics)」と呼んでいる。日本語でいうなら「AIが自律的に調査を回す分析」というイメージが近い。先日のASADASHIで紹介したGitHub Copilotが複数AIを同時に動かす新技術とも発想が重なる部分があり、「人が管理するのではなく、AIに調査そのものを委ねる」方向への流れが加速している。

コードが書けると何が変わるか、書けなくても何ができるか

Data Agent Kitはdev向けのツールであり、「コードが少し書ける人」を前提にした設計だ。ただし、ハードルは思っているより低い。

コードなしでできることはほぼない。ただし「拡張を入れてドキュメント通りに設定する」程度なら、SQLが読める・書けるレベルで十分に入門できる。

コードが書けると有利なことは大きく3つある。ひとつ目は自分のデータソースへの接続設定。どのDBに・どの認証情報で・どのテーブルを参照させるかを設定ファイルに書く作業が必要になる。ふたつ目はエージェントスキルのカスタマイズ。「この種の問いにはこのデータを優先して見ろ」という指示をスキルとして追加できる。三つ目は既存のIDEワークフローへの統合。VS Code系のエディタ(CursorやAntigravity IDE)への拡張として提供されているため、いま使っている開発環境にそのまま組み込める。

以前紹介したターミナルで動くオープンソースのAIコーディングエージェント登場と組み合わせて使うような構成も、設定次第では視野に入る。

今すぐ触るための最初の一手

公式ブログによると、Data Agent KitはVS Code系エディタへの拡張とプラグイン形式で提供されている。CursorやAntigravity IDEを使っていれば、エクステンションとして入れるところからスタートできる。

試すなら、まず自分が「答えを探すのに複数のシステムをまたいでいる問い」を1つ用意しておくといい。「売上が下がった時期とキャンペーン設定の変更が重なっていないか」「特定の顧客セグメントだけ購買頻度が落ちていないか」——こういった問いが手元にある状態で設定を進めると、使い道がイメージしやすい。

公式ドキュメントおよびブログはこちら: https://cloud.google.com/blog/products/data-analytics/agentic-analytics-with-the-data-agent-kit/

まずドキュメントを読んで、自分の手元のデータ環境(どのDBを使っているか、認証方法は何か)を把握してから接続設定に進むのが現実的な順番だ。

マルチエージェント構成への拡張:Antigravity SDKとの接続

Data Agent Kitをさらに発展させたい場合、GoogleはAntigravity SDKとの組み合わせも視野に入れている。

Antigravity SDKは、複数のエージェントを束ねて動かすための「エージェントハブ」を自前で構築するためのランタイムだ。エージェントが何を考え・どのツールを呼び・どこに状態を保存したかをリアルタイムで可視化できる(これを「シンキングトレース」と呼ぶ)。Data Agent Kitで「データ分析エージェント」を動かしながら、他の処理エージェントとその動きを並列に管理する、というような構成が可能になる。

公式では「GeminiのモデルアップデートがあればSDK側も自動で恩恵を受ける」とされており、モデルが新しくなるたびに設定を書き直す手間を省ける設計になっている。大規模にエージェントを使い倒したい人が次のフェーズで検討する技術スタックとして押さえておく価値がある。

https://cloud.google.com/blog/topics/developers-practitioners/power-agent-hubs-or-custom-harnesses-with-the-antigravity-sdk/

参照ソース